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2010年1月2日土曜日

観光のナラトロジー あるいは物語

 「魅力的な観光地」を考えてみるときに、何がその観光地を魅力的たらしめているか、という議論に焦点があてられる。

 例えば、具体的な例を考えてみると良いかもしれない。
仮に、京都と考えた場合。日本人にとってまずは「歴史の都」という印象を持つだろう。
しかし不思議な事に、「どんな歴史」と問うとこの回答については百人百様。定かなものではないだろう。
人によっては「幕末の歴史を感じられる都」となるかもしれないし、またあるいは「悠久の皇室の歴史の感じられる都」かもしれない。
つまり、人が観光地について魅力を感じる場合、何らかの物語を持ってその魅力についての印象を形作っているのである。

 一方、この物語については必ずしも過去の物語だけでは無く、未来の物語について語られる印象もある。
それはつまり「自分が(もし)そこに行ったら、このような事ができる。見れる。食べられる。」という自分の未来の物語についてである。

 この物語が生き生きとした印象を持ち始めるのは、その観光地の直接的な魅力からである。直接的な魅力とはすなわち、「あれを食べたい」「あれを見たい」「あそこに泊まりたい」「あの人に会いたい」「あれを感じたい」といった魅力である。
これは未来。つまり、「もしあそこに観光に行ったら」という形式で語られる。

 換言すれば、前者のように過去の物語を重視する観光を、「追体験型観光」。後者のように未来の物語を重視する観光を「実体験型観光」と呼ぶことができるだろう。

 すぐれた魅力を持つ観光地とは、このいずれかに属する資源が豊富であるか、あるいは双方に属する資源が豊富である観光地と言える。

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